こんばんは、中野祐治(ゆう)です。
"きらきらひかる"のレビューも、第3回目の今日で最終回だ。
最善を求める男心
この物語の中でも、最も好きな場面を紹介しよう。
『誠実、ということが、睦月にはおそろしく大事なことらしい。誠実であるためなら、彼はどんな犠牲もいとわない。
たとえそれが親族会議のようにやっかいな犠牲でも、だ。おかげで私は睦月のぶんまでどんどん不誠実になっていく。』
これは睦月が、ホモで恋人もいることを、笑子の両親に告白した時の、笑子の心の描写だ。
なぜ気に入っているかというと、睦月と同じ状況なら僕も同じことをするだろう、と共感したからだ。
作者は男心もよく理解している。
『このままでいたい。』
睦月も笑子も望むのはそれだけだ。
でも、睦月は家族や友人に対して誠実でありたいとも望む。
もちろんそれは、笑子を思ってのことでもあるのだが、結果として彼女を苦しめてしまう。
まさに『傷つき傷つけられながらも、愛することを止められない。』二人に、こんなにも共感してしまうのは、少なからず過去の恋愛と重なるところがあるからだろう。
複雑なようで真っ直ぐな女心
これとは対照的な一文が、笑子と紺のセリフにある。
『私たち、嘘をつくことなんて何とも思ってないもの』
『このまま』でいられるなら、嘘をつくことなんて何ともないというのだ。
決して女は嘘つきとかそんなことを言いたいわけではない。
でも、なんとも表現しにくいのだが、僕はこのセリフに、すごく女心を感じるのだ。
行動や言動からはわからなかったりするが、女心とはすごく純粋で、真っ直ぐなものじゃないかと思う。
純粋な愛に出会える本
愛し合うが故に、その愛でお互いに傷つけ合ってしまう睦月と笑子。
胸を締め付けられる場面も多いが、こんなにも純粋な"愛"を感じられる本はなかなかないと思う。
興味を持たれた方は、ぜひ読んでみて欲しい。
それではまた。
本日の格言
素直にいえば、恋をしたり信じあったりするのは無謀なことだと思います。どう考えたって野蛮です。それでもそれをやってしまう、たくさんの向こう見ずな人々に、この本を読んでいただけたらうれしいです。
〜江國香織(あとがきより)〜